アカデミック・ジャパニーズ・グループ研究会

2010年度

第21回研究会

日 時:  2010年6月12日(土)午後1時半から午後5時半まで
場 所: 東京国際大学 早稲田キャンパス

研究発表: 発表者  大場理恵子(東京農業大学)中村恵子(クリエイティブK)  
「キャリア教育とアカデミック教育を融合した日本語表現法授業の実践例 」

ワークショップ・講演
コーディネータ 福嶋健伸(実践女子大学)・門倉正美(横浜国立大学)
「アカデミック・ジャパニーズとリサーチ・リテラシー ~ケータイ、ウェブから本へ、
そして読むべき本へ~」  


今回のAJG研究会では、「リサーチ・リテラシー」についてワークを通じて、
考えてみました。『大学生のための日本語表現トレーニング
スキルアップ編・実践編』(三省堂)でウェブと図書館による
リサーチのワークを提起した福嶋健伸氏(実践女子大学)と、
研究会世話役の門倉(横浜国立大学)との共同のコーディネートによって
「ケータイ、ウェブから本へ、そして読むべき本へ」を
テーマとしたワークショップを行いました。

日本語クラスでレポートを課してみると、留学生は、教員が思っているほど
日本語の本を読んでいないという実感があります。
ウェブサイトでもっぱら調べた結果を、時には出典サイト名なしで引用したり、
さらにはウェブサイトの文章を「コピー&ペイスト(いわゆる「コピペ」)」で
間に合わせてしまったりといったケースも見られます。
こうしたレポートにどのように対処するか、ウェブでの情報から
参考文献(になりそうな文献)にどのように導くのか、そして、参考文献が
本当に学習者にとって役立つものかどうかの「品定め」をどのようにするか、
といった点を「リサーチ・リテラシー」のポイントとして焦点をあてます。
また、日本人学生にとっては、ケータイが検索用具としても駆使されているので、
その点についても実体験していただきました。

また、研究発表では、大場理恵子氏、中村恵子氏に
「キャリア教育とアカデミック教育を融合した日本語表現法授業の実践例」
について報告していただきました。

近年、文部科学省でも「キャリア教育」を学部教育の一環と
位置づけるようになってきていますが、大場・中村報告は、
キャリア教育とアカデミック・ジャパニーズ教育とが、
学問的探究でも社会でも共通に必要とされる
コミュニケーション能力の育成という点で、
共通の学習目標をもっているという点に着目し、
段階を踏んだ具体的な授業活動をデザインしています。

第22回研究会

日時:2010年11月20日(土)13時半~17時半
東京海洋大学 品川キャンパス

【発表】
 「書けない人の問題は何か:本人の意識、指導者の観察」    
 日本赤十字北九州看護大学教授 因京子

【パネルディスカッション】
 「レポート・論文を書くうえで何が大変か、どう乗り越えたか」   
 パネリスト:留学生、日本人学生のみなさん 

【グループディスカッション】
 「それぞれの段階で、どのような指導や支援が必要か」
   A 日本語学校の留学生など,これから進学する人の指導について
   B 学部留学生のアカデミック・ライティングの指導について
   C 大学院留学生のアカデミック・ライティングの指導について
   D 日本人学生へのレポートや日本語表現の指導について    
 

アカデミック・ライティング教育については、
基礎的な作文教育が必要な学生から
大学院での論文作成を目指す学生まで、
対象とする学生の範囲は広く学習課題も異なります。
一方で、日本人学生と共通の問題も少なくありません。

今回の例会では、当事者である学生の声を聞き、
学生とともにアカデミック・ライティングの教育上の課題や
その解決の方向について考えました。
前半のパネルディスカッションでは、学部留学生、
大学院進学予定の留学生、大学院留学生、
日本人の社会人院生など立場も学習経験も異なり、
また専門も異なるパネリストから、「何が大変か,どう乗り越えたか,
どんな助けがほしいか(ほしかったか)」など、
実際の体験にもとづく生の声を聞きました。
また、後半の教育対象者別のグループ・ディスカッションでは、
パネリストとともに、それぞれの段階での問題、解決の方向、
指導上のヒントなどについて話し合いました。

第23回研究会

日時:2011年2月5日(土)13時~17時30分
会場:東京海洋大学 品川キャンパス2号館2100A 楽水会館ホール

【会員実践・研究報告相互発表会】 
1.アカデミックジャパニーズ構築のための継続的なカリキュラム改善にむけて
-学習者・教師は大学院進学クラスのカリキュラムをどのように捉えているか-
佐藤 正則・江森 悦子        アークアカデミー新宿校

2.外国人留学生の講義理解能力についての考察
-日本人大学生との比較を通して-
王 威                   首都大学東京大学院 人文科学研究科
日本語教育学教室博士後期課程

3.日本語説明文テクストの理解
-韓国語母語話者を対象とした予備調査の結果から-
李 榮                   神田外語大学 言語科学研究センター 非常勤研究員

4.英語または韓国語を母語とする初級日本語学習者の作文過程
石毛 順子             国際教養大学

5.「文脈化」のための中・上級文型学習の枠組み試案
惠谷 容子             早稲田大学 日本語教育研究センター

6.学部生を対象とした実用文作成指導の試み
高橋 薫                東京大学大学院 情報学環ベネッセ先端教育技術学講座

【発表】
「移動する子ども」が「移動する子どもだった」ことをどう読みとるか
―大学生のアカデミック・ジャパニーズを育成する試み―
川上郁雄 早稲田大学大学


アカデミック・ジャパニーズ研究をどう進めるか?

私たちはさまざまなアカデミック・ジャパニーズ実践を行っていますが、
それを改善するために、さらに共有するために、同時に研究も行っています。
AJGでも研究会での発表やWEB版ジャーナル発行をしていますが、
お互いの実践や研究について、相談や意見交換をする機会はあまりないのではないでしょうか?

今回のAJG研究会はアカデミック・ジャパニーズというテーマでのお互いの実践や研究を報告し、
出席者同士で質問や意見交換を行う、新たなセクションを設けました。
発表20分+ディスカッション20分という時間の中で、 学会発表よりは多くのやり取りができ、
それぞれの実践や研究について気づかない点に気付きあう・・・ゼミのようなセクションです。
この発表でそれぞれの研究をブラッシュアップしAJジャーナル第3号への多くの投稿がありました。
また、川上郁雄氏より「『移動する子ども』が『移動する子どもだった』」ことをどう読みとるか 
―大学生のアカデミック・ジャパニーズを育成する試み―」と題して、ご自身のご著書の内容を中心に
発表していただきました。