アカデミック・ジャパニーズ・グループ研究会

2014年度

第33回研究会 反転授業のためのwebコンテンツづくり

従来、大学の授業は講義型が主流で、学生は講義で学習したことをもとに、自宅学習として発展的な内容に取り組むということがしばしば行われてきました。しかし、近年、これまで教員が行ってきた講義部分をwebコンテンツとして教材化し、事前学習として学習者が講義内容を理解してから授業に臨み、授業ではより発展的な内容に取り組む「反転授業」(Flipped Classroom)が注目されています。反転授業では事前に学習者のペースで基礎的な学習に取り組むことができ、かつ、学習時間が担保されることから、結果的に学習者の成績向上につながることが期待されています。
そこで、今回の研究会では、教育工学の専門家である林向達先生(徳島文理大学)をお迎えし、反転授業を行うためのwebコンテンツ作りに取り組むワークショップを実施しました。ワークショップでは、webコンテンツづくりに関心はあるものの、初めて取り組むのでちょっと心配…という初心者の方を対象に、初心者でも手軽に教材作成ができることを目指しました。

第33回研究会 世話人

ボイクマン総子(東京大学)
影山陽子(日本女子体育大学)
清水まさ子(国際交流基金)
高橋 薫(東洋大学)

概要

日時2014年6月28日(土) 13:00~17:00
会場東京大学駒場キャンパス
定員40名
参加費AJG会員:無料
非会員1000円
講師のご紹介

林向達(りんこうたつ)先生(徳島文理大学 短期大学部 生活科学科 准教授)
林先生のご専門は教育工学で、初等、中等教育におけるICT活用や情報化について過去から現在に至る歴史やデータを整理することに取り組んでいらっしゃいます。また、文科省「学びのイノベーション推進協議会」の委員や、総務省「フューチャースクール推進事業」の徳島県実証校担当研究者を務めるなど、学校現場でのICT活用に造形の深い研究者です。
りんラボ 林先生のHP
ICTのある学び 林先生のブログサイト

第34回研究会 留学生のキャリア形成におけるAJ教育の意味を考える 

2008年の「留学生30万人計画」では「卒業・修了後の社会の受入れの推進」が提言され、留学生のキャリア支援が各大学でも行われるようになりました。また、日本語学校や大学でも、留学生のキャリア(=人生の軌跡)形成を視野に入れた教育実践の必要性が指摘されています。しかし、いざ留学生のキャリア形成のための教育実践を行なおうと思っても、どのような活動をどのように取り入れたらいいのか、戸惑っている先生方もいらっしゃるのではないでしょうか。

そこで11月の第34回研究会では、次のような企画をいたしました。研究会の前半では、留学生の「Life(生活・人生)」についての研究をしていらっしゃる先生方お二人に研究成果を発表していただき、留学生の人生における日本留学や日本語学習の意味について考えを深めました。

後半では、留学生のキャリア形成を支援することを目指した実践をしていらっしゃる先生方お二人に実践を紹介していただきました。その上で、グループディスカッションを通して、日本語教育の枠組みの中で、それぞれの参加者が留学生のキャリア形成のためにどのような実践が可能かを考え、アイディアや知見を共有しました。

日本語学校や大学における日本語教育(AJ)が、留学生のキャリア形成にとってどのような意味があるのか、どのような実践が可能か、参加者の皆さんと考えていきました。

第34回研究会 世話人

江森悦子(アークアカデミー)
木下謙朗(東京福祉大学)
佐藤正則(早稲田大学)
松本明香(東京立正短期大学)
宮崎七湖(早稲田大学)

概要

日時2014年11月8日(土) 12:30~17:30
会場早稲田大学(3号館 601教室)
(東西線 早稲田駅から徒歩5分、副都心線 西早稲田駅から徒歩17分)
定員200名
申し込み
受付期間
2014年10月1日(水)~ 10月31日(金)
参加費AJG会員:無料
非会員1000円(非会員の方の当日の入会も受け付けます)

プログラム

12:00 ~ 12:30AJG会員受付開始
12:30 ~ 13:00会員総会
13:00 ~ 13:15休憩・非会員受付
(*12時半から13時まで受付をいたしませんので、総会終了までお待ちください)
13:15趣旨説明
13:20 ~ 15:05研究発表および実践報告
15:05 ~ 15:20休憩
15:20 ~ 15:40登壇者へのQAセッション
15:40 ~ 16:40グループでディスカッション
16:40 ~ 17:30話し合った内容を全体でシェア/ディスカッション
18:00 ~ 20:00懇親会

発表要旨

13:20~13:50  <研究発表>
◆茂住和世(東京情報大学)
私費外国人留学生にとっての日本留学の意味を考える―留学動機の生成から進 学先の決定までを追って

本発表では留学生に対するインタビューをTEMという方法論を用いて分析した結果を示す。まず、日本へ留学するという意思決定プロセスの解明に取り組み、これを佐伯(1984,2010)の論考の中のappreciationという概念で捉え直した結果、日本留学動機は日本の「よさ」を自らがわかるべきこととして認識することと、自分の現状への不満とがあいまって、日本に行くことで自分がより良くなることへの期待であると解釈された。次に、日本語学校在学中から大学進学までのプロセスの分析では、サトウ(2009)の「促進的記号」「社会的方向付け」という概念を用い、その進路選択の多様性を彼ら自身の目線から明らかにできた。このように個人の意味世界を、彼らを取り巻く社会文化的状況との関係性から捉えるという視点を、彼らのキャリア形成を考える際にも活かせればと思う。

13:50~14:20  <研究発表>
◆三代純平(武蔵野美術大学)
「グローバル人材」になるということ―元留学生のライフストーリーから

 グローバル人材」としての期待から、留学生の日本国内における就職が促進されている。しかし、留学生の5割以上が日本国内での就職を希望するのに対し、実際に就職できた留学生は2割程度にとどまる。このような状況の中、日本語教育においても、「アジア人材資金構想」を契機に、急速に就職支援を意識した実践が整備されている。
 一方で、「グローバル人材」とは何かは、依然コンセンサスがあるとは言えず、「グローバル人材」として日本企業で働くという経験についても、私たちに理解があるとは言い難いのが現状である。そこで、日本企業に勤める元留学生の語りから、「グローバル人材」として会社でメンバーシップを得るプロセスとそこにあるアイデンティティ交渉・葛藤を考察する。さらに考察から、日本語教育が就職支援を行うということはどのようなことなのかを問い直したい。

14:20~14:25  休憩
14:25~14:45  <実践報告>
◆古川由美子(アークアカデミー)
就職を目的としたクラスの実践―日本語教育と学生の自己成長との関わりから

 留学生が日本で就職するためには何が必要だろうか。日本語学校の学生に聞くと、ビジネスの場面の会話、聴解、ビジネスマナーなどの声が挙がる。しかし、果たして本当にそれだけで十分なのだろうか。
 本発表では、日本語学校におけるビジネス日本語コースの実践を報告する。ビジネス日本語コースは、日本にある企業、または日系企業への就職を目指す学習者を対象に教室実践を行っている。その中で、「企業活動シミュレーション」という授業を取り上げる。
 日本の企業ではチームでプロジェクトに取り組むことが多々ある。そこでは、チームワークと結果が求められる。この授業では、あるプロジェクトを想定し、学生がグループでリサーチ、商品企画、プレゼンというタスクを3ヶ月かけて行う。その活動の中で、学生たちは他者と意見がぶつかったり、予定通りに進まなかったりと、チームで仕事を進めることの難しさを体験する。この苦々しい体験が、学生たちの就職先で生かされたとき、この授業の目標が達成できたと言えるのではないだろうか。

14:45~15:05  <実践報告>
◆奥原淳子(早稲田大学)
授業「『働くこと』を考える」の実践報告

 本授業は担当教員自らが発案し、センターから承認を得た上で展開していく「テーマ科目」という枠組みの中に設置されている。そもそもの発案の理由は、働くことの面白さ・厳しさの中での充実感を伝え、社会に出ることを怖がらないでほしいというエールを送りたいと思ったからである。その狙いを具現化するために、(1)視野を広げる、(2)仕事に関わる情報の提供、(3)日本語力の養成 の3つの柱で授業を行ってきた。「視野を広げる」では、ゲストセッション・インタビュー・仕事や自伝記事の紹介など、「情報の提供」では、就職活動の紹介・キャリアセンター訪問など、「日本語力の養成」は、語彙のクイズ、発表やインタビューの練習などを行っている。なかでも、大学生、社会人の話を聞くゲストセッションは学生にとって特に印象に残る活動となっている。報告では、1.クラスの概要 2.授業内容 3.学生の反応 を具体的に述べ、学生が主体的に自身の生き方を考えられる時間をどう提供できるか共に考えていきたい。

第35回研究会 会員ポスター発表および講演・ワークショップ

近年、各地の大学で、母語話者大学生を主対象とした日本語表現科目が開設され、必修化されているケースも見受けられます。対象者が多く、担い手となる教師の背景もさまざまであることから、混乱もあるようです。
レポート作成・口頭発表などが課されるケースが多いようですが、問題意識を抱き、資料を読み込んで適切に引用する、そもそもなぜそういった表現活動が自分に必要かを知る、というところから始めて、能動的に学習に取り組ませるためには、さまざまなしかけとしくみが必要です。

今回の講師の山本啓一先生は、元法学部長(ご専門は国際政治学)として初年次教育の必修科目の改革を推進し、複数の教員によるプロセス・アプローチのライティング科目を立ち上げ、展開していらっしゃいます。「ジグソー・リーディング+KJ法を用いた話し合い+グループ発表+ライティング」を1ユニットとして、15週に複数回のユニットの学習を積み上げていくというシラバス設計です。文章や発表の指導と同時に、将来の就職支援も射程に入れ、幅広い分野で活かせる汎用的技能(ジェネリック・スキル)の育成をめざした実践です。

このような授業に日本語教師でも関わっている方が多いのではないでしょうか。大学初年次教育のみならず、日本語学校や予備教育にも活かせる手法です。当日は、実践を踏まえたご講演に加え、ユニットの中の活動を体験するワークショップを実施していただきました。

第35回研究会 世話人

武一美(早稲田大学)
小笠恵美子(東海大学)
トンプソン美恵子(早稲田大学)
大島弥生(東京海洋大学)

概要

日時2015年2月7日(土) 10:00~17:00
会場東京海洋大学 品川キャンパス 白鷹館
定員80名
参加費AJG会員:無料
非会員1000円

プログラム

【午前の部】会員ポスター発表 発表内容はこちらをご覧ください
10:00受付開始
10:30 ~ 12:00会員ポスター発表
12:00 ~ 13:30昼食兼交流会
【午後の部】講演とワークショップ

講師:山本啓一先生(九州国際大学)
「初年次文章表現科目におけるジェネリック・スキルの養成
〜アクティブラーニングを組み込んだ文章表現科目の授業設計」
ファシリテーター:吉村 充功氏・成瀬 尚志氏 他

13:30 ~ 14:00講演
14:00 ~ 16:30ワークショップ
16:30 ~ 17:00質疑応答・共有とふりかえり
講師紹介

山本啓一(やまもと けいいち)氏
九州国際大学法学部教授法学部教授。前法学部長。専門は国際政治学。博士(法学)。
文章表現科目のほかに「リスクマネジメント論」等の授業を担当。主な業績は「学力に課題を抱える大学における就業力の育成と課題―九州国際大学法学部の事例から」『日本労働研究雑誌』(第629号、平成24年)ほか。
*今回の研究会は、以下の科研費研究プロジェクトとの共同開催です。
科研タイトル:「生きる力を育成する文章表現科目のプログラム評価と授業改善ツールの開発」基盤研究(C)(課題番号26381108)
研究代表者:山本啓一

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